当地「膳所」の歴史は古く、多くの旧跡に恵まれています。先頃も聖武天皇が東国行幸の際に使った仮宮の一つである頓宮(とんぐう)跡が発見されました。 静かな琵琶湖の岸辺と、背後に連なる山々に挟まれた細長い町で中央には東海道が通っています。当地に滞在していた芭蕉は、“四方より花吹入て鳰の海”と詠み、その石碑は今も岸辺にあります。 江戸時代は、膳所藩の城下で、琵琶湖を望む山手の柿ヶ坂と呼ばれる一帯には、緑の茶園が広がり、良質のお茶を産出していました。 |
膳所城古図 琵琶湖より膳所城と城下を遠望 |
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時は嘉永6年米艦(黒船)が浦賀に来航し、日本との通商を求めてきました。日本国中大騒ぎになったのはご存じの通りですが、この時、膳所藩江戸詰の儒者「関 研」(号 藍梁)は命により、幕府の応接役 林大学頭(かみ)に従って米艦へ行ったところ、ペリー提督が「貴国には西洋のコーヒーのような飲料はないか」とたずねたので、持参した膳所の太田重兵衛製の「無名」と名付けられた茶を出したところ、ペリー提督このお茶を大変気に入り、「交易を開きたる時、米国に輸出される物産はこのお茶なり」と深く賞賛しました。
かくして、膳所茶は生糸と共に輸出されることになり、膳所のお茶は日本で最初に米国へ輸出されたお茶となりました。信楽焼の茶壺に入れられ、神戸と横浜から輸出されていたと伝えられます。 「関 研」は、13歳のとき、幕府の儒官「林大学頭」に学び、幕府の昌平黌(東大の前身)に入学、秀才五名の内の一人でありました。ペリーの通訳である清人羅森という人物が、提督ペリーに従って米艦に乗っており、七律を読んで友好を求めてきたところ。関は即席の漢詩を読んでこれに答えたという逸話があります。 日本側は緑茶(膳所茶)で接待しましたが、ペリー側はレモネードを出しました。瓶のコルク栓を開けるときの「ポン」という音に驚き、侍たちは刀の柄に手をかけたとか、この炭酸飲料を飲んで謹厳実直な一行はゲップをこらえるのに難儀したとも言われます。 関 研はこの使命を終えた後、藩侯に拝謁して、開港貿易のを行い、国産を奨励することの必要性を説きました。 明治元年(1868)には米国商人モースを介して製茶四十箱、二千斤(1、2トン)が信楽焼きの茶壺に入れられ神戸港から輸出されています。 これらの史実は私が30数年前(1980年頃)膳所の郷土史研究家「竹内将人」氏の著書を調べていた時にその中で偶然目にしたもので、驚きました。茶業を生業とする私も全く知らなかったし、膳所に在住する人々からも全く忘れ去られていたのです。 膳所のこのような由緒ある故事を今一度思っていただき、さらには膳所茶の再興で、ペリーが飲んで、又、日本人が数百年間味わってきた素朴で懐かしい味と香りを味わっていただきたというのが私の願いです。 追記 この故事は、弊店が2002年(平成14年)にHPを立ち上げ、此の「膳所茶」を以来十数年間発信し続けています。最近では少しずつでは有りますが世の中に認識されつつあります。このHPで「膳所茶」の史実を知ってWikipediaにも投稿され、私が見つけた郷土史研究家「竹内将人」氏の著書を調べた何人かの方が、最近本も数冊出版されているようです。 これといった特徴が無かった当地「膳所」の町おこしに、微力ながらもつながればと思いは大きくなるばかりです。 |
「日本茶輸出のきっかけを生んだ」 念仏重兵衛(太田重兵衛)
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当時の価格表 |
岩倉具視は茶園を「念仏園」と命名し、 伏原宣諭に書かせました |
ペリーと接見した「関 研」の書で店舗名「龍井堂」 |
資料提供 : 太田弘造氏 |
写真撮影 : 膳所歴史資料室(大津市立膳所市民センター2階) |
手形 資料提供 : 太田弘造氏 実寸(約)=縦140mm幅100mm |
表 |
裏 |
表 |
裏 |
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膳所茶の藩札(預かり手形・茶札) 実寸(約)=縦130mm幅45mm |
銭一文は江戸時代中後期において現代で約12円 藩札の代銭百文=約1,200円 |
資料提供 : 太田耕次氏 |
掛屋徳利正面 | 裏 | 横 |
※ 当地に逗留していた芭蕉の作、と伝えられる句(?) 確かではありません、現代のキャッチコピーのようなものだと思われます。 |
膳所茶を手にする 大津絵の鬼 良鬼作 |
明治時代に膳所茶輸出の後、他所からの茶の輸出用箱ラベル(蘭字)として使用されたものです。 |
嘉永7年(1854年)横浜への黒船来航 |
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